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深読み 先読み

コメダ珈琲 布施義男社長

2009年10月04日

写真

古沢孝樹撮影

【不況でも関東・関西に本格進出】

●独特メニューで勝負

 コーヒーチェーン「コメダ珈琲」を展開するコメダ(名古屋市東区)が、地域に特化した家業的経営を捨て、関東と関西に本格的に打って出る。独特のメニューは、東海地方以外でも受け入れられるのか。昨年9月に創業者からバトンを引き継いだ布施義男社長に聞いた。(聞き手・久保智)

 ―消費不況です。売り上げは落ちていませんか。

「さすがに冷夏だった7、8月はしんどかった。例年ならかき氷が月に千杯出ていた店が今年は半分。1店当たり月30万円近く、売り上げ減となった。しかし、金融危機が起きた昨年9月から今年6月までは、前年同月とほぼ同じ売り上げを維持できた。午前中のモーニングサービスの時間帯で全体の4割を売り上げるが、ほかでお金を使わなくなっても、朝食を抜く人は少ないようだ」

 ―何が受け入れられているのでしょう。

 「飛び抜けた強みはない。ただ、一つ一つが標準を上回っている。駐車場は出入りしやすいし、駐車できる台数も多い。店内には新聞、雑誌を普通の喫茶店より多くそろえている。イスもゆったり座れるよう、通常より数センチ広い特注品だ。サービスのゆで卵やトーストは温かい状態で出すし、厚切りトーストもしっかりバターを塗っている。無料のものにこそ付加価値を付けようという考え方からだ」

 ―いろいろサービス品が付くモーニングが人気ですが、もうけはちゃんと出るのですか。

 「もうかっている。コーヒーは利益率が高い。一方、パンとゆで卵の原価はそれほどでもない。お客さんが多い勝負時の午前中に従業員を集中して投入するなど、効率化も図っている」

 ―セットメニューがないのも特徴のようですが。

 「お客さんの目的はくつろいでコーヒーを飲むことだ。外食チェーンの中には、原価の安い商品をセットメニューとして出して利益を確保しているところもある。だが、コメダは、おなかがすいているなら、こちらが用意したセットメニューではなく、食べたいものを食べていただければ、という考え方をとっている」

 ―昨年9月に社長に就任しました。コメダとの出会いは。

 「6年前、『変わった店がある』と聞いて初めてコメダに行き、驚いた。当時の外食産業はどこも売り上げが低迷していたが、店内は満席だった。高齢者が多いのを見て、『これからはこういう店がヒットするな』と感じた。『社長に』という話が舞い込んできたとき、『やります』と即決した」

 ―コメダにとっては、高齢化もチャンスなのですか。

 「チャンスだ。外観や内装がおしゃれで、メニューに横文字が多い外食チェーンが増え、うちのように高齢者が気軽に入れる店は少なくなった。団塊ジュニアが高齢化するまで、そうあと20年ぐらいはいけると思う」

 ―新経営陣として、どこか変えた部分はありますか。

 「店舗やメニューはまったく変えていない。お客さんに受け入れられているので、変える必要がない。ただ、以前の家業的な経営からは転換した。2、3年後に店頭上場できるよう、準備を進めている。まずは、12年2月に店舗数を500にするのが目標だ」

 ―どの地域に力を入れていくつもりですか。

 「人口が集中している関東圏と関西圏だ。愛知県内には約240店もあり、もう『コメダの敵は隣のコメダ』状態だ。関東は横浜にすでに事務所がある。大阪には7月に作った」

 ―シロノワールなど独特なメニューを、関東や関西の人は受け入れるでしょうか。

 「関東では当初、モーニングを頼むお客さんはとても少なかった。しかし、だんだん口コミで広まってきた。シロノワールも、マスコミで取り上げられることが増え、支持していただけるようになった」

 ―コメダのコーヒーを一言で言うと。

 「ネルドリップで大量に抽出するので、濃くてすっきりした味だ。それに入れるコーヒークリームは、乳脂肪分が40%以上の立派なものを使っている。砂糖もクリームも入れるのが、お勧めの飲み方だ。私も1日に2、3杯飲むが、こうすると甘みと苦みのバランスがよく、ほっとする味で本当にうまい。ブラックで飲む人もいるが、入れないともったいない」

 ふせ・よしお 千葉県出身。明大商学部卒、81年にサントリーに入り、04年からファーストキッチン社長。08年4月にサントリーへ戻り、同年8月に退社。9月にコメダ社長に就任。50歳。

 コメダ珈琲 68年に加藤太郎氏が名古屋市に開いた喫茶店が始まり。名の由来は「米屋の太郎」。父親が米穀店を営んでいた。08年に投資ファンドが買収。店舗は1都2府8県に345店。ゆで卵やトーストなどのサービス品がつくモーニングや、黒(仏語でノワール)っぽい温かいデニッシュの上に、白いソフトクリームを乗せた「シロノワール」が名物。

【記者の視点】

 消費不況の折、いよいよ財布のひもの固くなった消費者からお金を引き出すため、小売りやサービス業は激烈な競争を繰り広げている。他との差別化を図る最も手っ取り早い手段が価格だ。
 その点、コメダの一品一品は必ずしも安くはない。むしろ、シロノワールや小倉トーストなど独特のメニューやサービスで差別化を狙う戦略だ。好き嫌いは分かれるかもしれないが、関東や関西でも徐々に存在感を増すだろう。
 ただ、ひとつ気になることがある。たばこの煙でモクモクしている店舗があることだ。コメダのホームページを通じた意見で最も多いのも、たばこを吸わない人からの苦情だという。
 布施社長によれば、新たに出す店は分煙を実施しているが、ずっと昔からある店や街中の狭い店では、できていない店もあるという。メニューは独特でもいいが、分煙・禁煙は世の流れ。たばこを吸わない人の足を遠ざけていないか、ちょっと心配になった。

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