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ここから本文エリア 弘前大企画 がんの話
(82)肺に起こる問題2009年09月11日 最近、著名な方ががんで亡くなり、病名に「がん性リンパ管症」とありました。いったい、どんな病気なのかと疑問に思われた方がたくさんおられると思います。がん性リンパ管症とは、独立したがんの病名ではありません。がん細胞が肺のリンパ管に詰まって、呼吸困難をおこした状態を言います。 ですから、もとのがんが、肺がんでも消化器のがんでも乳がんでも、「がん性リンパ管症」となります。言い換えますと、どこかにできたがんが肺に転移をおこした、その一つの症状が「がん性リンパ管症」です。肺は全身の血液が通過するため、肺以外のがんでも、さまざまな影響を受けます。今回は、がんによって肺に起こる問題についてお話ししたいと思います。 ■転移性肺がん 転移性肺がんは、がんの経過中に胸部X線写真をとってみて、肺に複数の結節陰影(丸い影)があることで見つかります。肺は全身の血液が流れ、かつフィルターとしての役割をしています。そのため、多くの臓器のがんは肺に転移を起こします。胃がん、大腸がんなどの消化器系がん、乳がん、泌尿器系がん、また肺がん自体も血液を介して肺に転移をおこします。 転移自体は数が少なければ、症状が出るわけではありません。治療は、基本的にはもとのがんと同じ抗がん剤を中心としたものとなります。もとのがんの治療がうまくいっており、かつ転移巣が手術により完全に取り除ける場合は手術をする場合もあります。 ■がん性リンパ管症 がんの転移の仕方には血液を介する血行性転移のほか、リンパ行性転移があります。毛細血管という名前をご存じかもしれません。太い血管は組織の中で網目のように細い血管となって、血液を送っていますが、リンパ管も血管と同様に全身に網目のように存在し、リンパ節とともにネットワークを形成しています。 がんが肺のリンパ節に転移したり、血行性に肺の末端にがんの転移が生じたりした場合、急速に肺の中のリンパ管が、がん細胞で詰まってしまう場合があります。これが、「がん性リンパ管症」と呼ばれるものです。転移性肺がんが胸部X線写真で結節(丸い影)をつくるのに対し、がん性リンパ管症は肺炎のような広く大きい影をつくります。 リンパの流れがとまり、肺がむくんだ状態になるため、せき、呼吸困難などの重大な症状が出現します。図に肺の断面図(肺の輪切り)を示しました。黒い部分がリンパ管で、がん細胞で埋まってしまいます。 ■がん性胸膜炎 肺の構造は、自転車のタイヤの中のチューブと同じようなものです。肺の表面は胸膜という膜で覆われ、胸郭の中ですき間なく膨らんだ状態にあります。よく肺に水がたまると言いますが、自転車に例えれば、チューブとタイヤのすき間の部分にあたる胸腔(きょう・くう)に水がたまった状態で、これを胸水と呼んでいます。 胸水が増えると、肺はつぶれてしまい、その結果、呼吸困難となります。胸水はがん以外でも心不全、結核をはじめ、たくさんの病気でたまることがあります。肺がん、乳がん、消化器のがんなどで肺の胸膜に転移がおこり、胸水がたまった場合をがん性胸膜炎と呼んでいます。 多くの場合、胸水を採取してがん細胞が見つかることで診断がつきます。残念ながら、がんの状態としてはかなり進行してしまった状態です。呼吸困難の症状を取り除くには胸水を抜けばよいのですが、効果は一時的で、胸水はまたたまってしまいます。 しかも、胸水を繰り返し抜くことで体力は消耗してしまいます。胸水は単なる水ではなく、血液の栄養分が大量に含まれているからです。 治療としては、胸腔に管を入れ(ドレナージ)、一度全部の胸水を抜いた後に、薬剤を注入し胸膜を癒着させ、胸水がたまるスペースをなくす胸膜癒着術が行われます。 根治的な治療とは残念ながら言えませんが、うまくいきますと、かなり予後は改善されます。 がんが進行すると、かなりの頻度で生じる肺の症状について述べました。これらはがんが進行した結果生じたもので、治療法は根本的なものではありません。せき、呼吸困難には、酸素吸入、呼吸を楽にする薬など、総合的な緩和ケアが必要になります。
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