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弘前大企画 がんの話

(85)第5回講演会「乳がん」詳報

2009年10月02日

 今回は、8月29日に五所川原市で開かれた第5回講演会「乳がんの話あれこれ」の内容をくわしくお伝えします。講演者は、弘前大学医学部付属病院消化器・乳腺・甲状腺外科の小田桐弘毅講師です。

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 みなさんにまず知っていただきたいことは、青森県ではがんで亡くなる人がとても多いということです。厚生労働省が発表した2005年の都道府県別がん死亡率では、青森県は男女とも全国で最も高くなっています。青森県の人はがんに要注意ということです。

 がんになる年齢は男性と女性で異なります。男性では50歳を過ぎると急にがんになる人が増えます。50歳以下の年齢では女性の方ががんになる方の割合が多い。これは女性に多いがん(子宮がんと乳がん)が比較的若い年齢で発生することによります。

 日本人のがんの代表であった胃がんなどは最近、減ってきていますが、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの女性のがんが増えています。

 女性のがんの中で最も多いのは乳がんです。70歳以上では女性でも胃がん、大腸がんの方が多くなりますが、60歳以下の女性のがんでは乳がんが最も多いのです。乳がんのピークは45歳くらいですが、20代での発生もあり得ます。50歳以降でも多くみられ、45歳のピーク時とそんなに差はありません。

 さらに困ったことに、乳がんになる人は年々すごい勢いで増え続けています。日本全体でみると、30年前は年間約1万人でした。ところが、20年前に2万人を超え、02年には4万人を超えました。欧米では乳がんの死亡率が減少に転じましたが、日本では上昇を続けています。

 ただし、あまり怖がり過ぎる必要はありません。乳がんは他のがんよりは治りやすいのです。乳がん患者の5年生存率は他のがんとくらべて高く、8割以上の方が5年以上生存しています。

 乳がんの特徴は、他のがんに比べて患者が若いということです。ある調査結果では、子どもがまだ小学生の乳がん患者も多いことがわかりました。母親ががんになった場合、その影響で子どもがうつになることも多いので、そのケアも必要です。

 最も強調したいのは、早期に見つけてほしいということです。温存手術が可能になる(乳房が残せる)、再発もしにくく死亡率も低くなる、治療費もかからない、などメリットがたくさんあります。

 乳がんの10年生存率を分析すると、早期発見の人はほとんどが治っていることが分かります。しかし、進行しているとかなり厳しくなります。

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 治療費について大まかに言いますと、早期なら20万円くらいで済みますが、進行がんだと薬代がかなり上乗せされて100万円近くかかってしまいます。

 米国ではマンモグラフィー検診が普及しており、国の補助も厚くなっています。日本では、かなりひどくなってから病院に来る人がいまだにいます。極端な例ですが、乳がんが大きくなりすぎて、腫瘍(しゅ・よう)がくずれて出血が止まらなくなったりして、どうしようもなくなってから病院に来る人も残念ながらいます。乳がんは比較的治りやすいがんですから、怖がらずに病院に行ってほしいと思います。

 次に検査方法を簡単に説明します。

 以前は乳がん検診といえば触診だけでした。一方、マンモグラフィーは乳房のレントゲン撮影です。その有用性がはっきりしてからは、検診はこちらに移行しました。撮影時に乳房を押されるので痛い、という方がいらっしゃいます。乳腺の中に隠れてしまうがんを見逃さないため、なるべく乳腺を薄くして押しながら写真をとる、ということを理解してください。

 マンモグラフィーで乳がんがどのように見えるかというと、一つは腫瘤(しゅ・りゅう)で白いかたまりのように見えます。もう一つは砂粒のように見える石灰化です。ただし、これはがん以外の可能性もあるので見分けなくてはなりません。大学病院ではステレオガイド下マンモトーム生検といって、石灰化部分をレントゲンで見ながら針を刺し、がんかどうかを調べています。

 マンモグラフィー検査はとても良い検査です。しかし、若い人は乳腺が厚いため、がんがマンモグラフィーでは見えず、超音波検査でしか見えないケースもあります。超音波検診の有効性を証明する全国規模の研究が、東北大学の大内教授のもとで始まっています。

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 次に、乳がんの治療についてお話しします。

 手術術式は大きく変わりました。ずっと以前は大胸筋まで切除したので、あばら骨が浮き出るくらいのひどい傷が残りました。30年くらい前から大胸筋は切除しない胸筋温存手術に変わっていきましたが、乳房はまだ完全に切除していました。現在では乳房温存手術が主流です。

 その根拠は温存手術に放射線治療を加えた場合、乳房切除と成績に差がなかったというイタリアの研究です。

 日本は20年くらい前から温存手術が普及し始め、乳腺専門医のいる病院の全国調査では約7割が温存手術でした。大学病院は9割以上です。

 薬物治療も大きなウエートを占めます。乳がんならではの薬物治療は、ホルモン療法です。だいたい3分の2の乳がんは女性ホルモン(エストロゲン)で大きくなる性質があります。その場合、女性ホルモンを抑えれば、再発や進行も抑えられます。

 ホルモン療法は月経の有無で異なります。生理がある人は、卵巣から多量に分泌されるエストロゲンを抑える注射薬が有効です。閉経後は、主に女性ホルモンへ転換する酵素を抑える内服薬を最近は使います。エストロゲンの働きを抑える内服薬はどちらでも使われます。

 がんの治療で一般に使われる抗がん剤ですが、乳がんの代表的なものはアドリアマイシンです。数十年前から世界中で使われ、吐き気や抜け毛などの副作用が強いのですが、よく効くのでまず最初に使われる薬です。

 臨床試験の結果から、今ではさまざまな抗がん剤を乳がんに使うようになってきました。最近は副作用も軽くなってきています。新しい薬として分子標的薬があります。がん細胞の中にある、増殖をつかさどるたんぱくの働きを抑えて進行を抑える薬です。

 代表的なものでは、HER2(ハーツー)というたんぱくの抗体を数年前から使っており、大変よく効きます。また、これまで乳がんの脳転移に効く薬がありませんでしたが、この春から使えるようになった薬はそれにも効くことが分かりました。ただ、再発してしまうと治療は難しいので、やはり早期発見に勝るものはありません。

 ということで、乳がん検診の話に戻ります。

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 2年前に厚労省が「がん対策推進基本計画」を出し、乳がんの検診受診率を5年以内に50%以上にする目標を掲げました。青森県の乳がん検診受診率は全国平均と同様20%程度で、まだまだです。

 乳がんへの理解を深め、検診受診率を高める世界的な運動としてピンクリボン運動があります。日本でこの運動を広めるため、友人がやっているJ・POSH(ジェイポッシュ)という団体は今年、青森県で7月から9月の間に検診を受けた人の費用の一部を補助していました。

 また、国でも対象年齢を限ってですが、今年度の乳がん検診を無料で受けられるクーポン券を配ることが決まりました。各市町村が窓口になりますのでそれぞれ確認してみて下さい。

 乳がんは自分で触診して気づくことも多いので、自己検診も大切です。タレントの山田邦子さんも番組中に自分でしこりを見つけました。

 「乳がんにならない方法はありますか」という質問を受けることがありますが、残念ながらありません。ただ、なりやすい人の傾向は分かっています。

 親や姉妹が乳がんになった人。大酒飲み。メタボリックシンドロームの人。お産の経験がない人。初産年齢が30歳以上の人。あてはまる方はぜひ検診を受けてください。

 もし、乳がんの可能性があるのでしたら、ぜひ乳腺専門医に診てもらうことが重要です。専門医以外は、今では標準的ではない乳がんの検査・治療を行う場合もあるようなので、乳腺を専門にしている医者にかかることをお勧めします。

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