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ここから本文エリア 弘前大企画 がんの話
(88)Q&A 放射線2009年10月23日 質問 放射能とか放射線とか言われますが、その違いを教えてください。それが、がん治療に使われたり、チェルノブイリ原発事故のようにがんを引き起こしたりするとも聞きます。善悪どちらなんでしょう。単位もグレイ、ベクレル、シーベルトなどいろいろ耳にします。違いを教えてください。 答え 放射線は、一般的には電離性を有する高いエネルギーを持った電磁波(X線・ガンマ線など)や粒子線(粒子によるビーム、つまり、それらの粒子が束状になって進んでいく状態)を指します。放射線を出す能力や、その能力を持つ物質のことを放射能と呼びます。 つまり、放射線と放射能は光と電球の関係に似ています。光を出す能力そのものやその能力を持つ電球が放射能で、電球から出された光が放射線に当たるわけです。 放射線は善でも悪でもありません。宇宙ができてからこのかた、人類誕生のはるか昔から存在した物理現象です。人間の価値観である善悪をはるかに超越した存在です。 その前に人類はひれ伏すしかなく、利用させていただくことができるだけです。利用の仕方を間違えると、原子炉事故や広島・長崎の原爆による放射線被曝(ひ・ばく)、東海村の臨界事故など、悲惨な事態が待ち受けています。 しかし、うまく利用すると身体の中を画像で手に取るように見られたり、がんを治療したりできます。そのように障害を抑えて最大の利点をひき出すよう、人体へ放射線を照射できるのは医学的利用に限られ、その決定も研鑽(けん・さん)を積んだ医師だけです。 放射線・放射能の単位のうち、“グレイ(Gy)”は吸収した放射線のエネルギーの総量、つまり吸収線量を表します。旧単位は“ラド(rad)”でした。“シーベルト(Sv)”は放射線防護の分野で使い、人体が吸収した放射線の影響度を数値化した単位で、吸収線量(Gy)に放射線の種類ごとに定められた一定の係数を乗じて計算します。旧単位は“レム(rem)”でした。 “ベクレル(Bq)”は放射能の量を表し、1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を放つ量が1Bqです。けた数が大きくなることが多く、通常はk(キロ=1千倍)やM(メガ=100万倍)、G(ギガ=10億倍)を付け、kBq、MBq、GBqのように表記します。旧単位は、“キュリー(Ci)”でした。 質問 今の放射線科で注目されている新しい技術や機器を教えてください。 答え 放射線科の分野は同じ医学でも非常に進歩が著しく、売り出し中の技術、機器がたくさんあります。選ぶのは大変ですが、強いて五つを挙げたいと思います。 (1)多列CT CTは、X線で身体の輪切りを撮る検査法ですが、検出器の列が増えると、撮影速度が上がり、より広い範囲を短時間で高精細に撮れます。 1998年に4列のCT機が登場し、それまでの1列だけのヘリカルCTの数倍の速度で撮れるようになりました。今では64列から128列、256列、320列のCTが使われています。X線を出す管球も1個だけでなく2個の機械も登場しました。 非常に速く広い範囲の高精細な画像を撮れるので、冠動脈のように動きを止められない部位も、あたかも止めたかのように、美しい画像を得られるようになったのです。 (2)高磁場MRI MRIは強い磁石を用いて人体の水素原子核の存在量とその環境を画像化する診断法です。画像の質は、磁場の強さに大きく左右され、磁場が高いほど高精細な画像が撮れます。低い磁場では不可能な画像も撮れ、診断の幅も広がるのです。 以前の最高の磁場強度は1・5T(テスラ)でしたが、今では臨床的に3TのMRI機が国内で100台以上、稼働しています。実験的には7Tやそれ以上のMRI機も実現しています。今年度中には県内初の3T―MRI機が弘前大学医学部付属病院に導入される予定で、地域医療に貢献すると思われます。 (3)IVR 画像診断的な手法を治療や診断に応用したのが、IVR(Interventional Radiology)です。日本語では「放射線診断技術の治療的応用」と訳します。血管造影の手技を用いて破れた血管を詰めて出血を止めたり、がんの病巣に濃い抗がん剤を直接注入したりします。CTを見ながら病変の部分の組織を採り、病理的に診断することなどもします。 それまでは手術でしかできなかったことが身体を開けずにできるので、身体に負担が少なく、病気の部分だけを正確に治療できたり、入院期間も短縮できたりするなどの優れた特徴を備えています。 (4)PET PETは、陽電子(ポジトロン)で印を付けた薬剤を用いた断層撮影のことで、今はがんの診断を目的として、ブドウ糖の類似物質であるFDG(Fluoro―deoxy―glucose)を用いたFDG―PETが広く行われています。 FDGを注射し、糖代謝の高進したがんの組織を光らせようという診断法です。病変の良悪性の診断やがんの進行度の診断、治療後の再発の診断などに威力を発揮します。 (5)高精度放射線治療 放射線治療の成否は、正常組織の障害をいかに抑え、がんの病巣に大量の放射線をあてられるかにかかっています。がんの病巣にだけ放射線を照射し、周囲の正常組織にはなるべく当たらないようにすることが重要です。 そのために照射法の精度も上がってきています。最近は多方向からの照射で正確に病巣に照射する「定位放射線療法」(SRT)や、放射線の強さを変えて当て、正常組織の照射線量を少なくする「強度変調放射線療法」(IMRT)などの進んだ治療法があります。
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