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弘前大企画 がんの話

(90)Q&A・肺がん検診

2009年11月06日

写真

 【質問】3年間続けてドックで肺がんの検査をしました。3年前に小さな粒状のもの(4ミリくらい)が見つかりましたが、今年、大きさは変わりがないし、特に心配はないと言われました。それでも時々軽いせきが出るので気になります。細胞を採って調べなくてよいものか心配です。

 【答え】 肺に影があると言われると、どなたでも心配になります。しかし、影はそれほど珍しいわけではありません。

 通常の定期健康診断で胸部のX線撮影をした場合、有所見率(なんらかの異常が認められる確率)は約4〜5%程度とされています。3年間大きさの変わらない4ミリ程度の粒状の影は、恐らくは何か病気をした痕跡で心配しなくてよいと思います。

 こう言いますと、「肺の病気はしたことがない」と言われるかもしれません。でも知らないうちに、肺の病気にかかり、跡が残るのはよくあることです。時々せきがでるのが心配とのことですが、影との関係はないと思われ、細胞を採るような検査は不要と考えられます。

 今回はご質問に関連のある肺がん検診のお話をしようと思います。

 肺がん検診は通常、胸部X線写真と必要に応じた喀痰(かく・たん)の細胞診(痰の中にがん細胞があるかの検査)をします。

 肺の構造は「木」に似ています。「枝」が空気の通り道である気管支であり、「葉」が酸素交換をする肺胞と呼ばれる部分です。がんの発生場所は、この葉(末梢(まっ・しょう))と枝(中枢)に分けられます。

 それぞれの特徴を述べましょう。葉の色が変わると外から見てわかりますね。同じように、葉にできるがんはX線写真に映ります。しかし、葉にできるがんは、進行しない限り症状が出ません。

 一方、枝にできるがんは、初期の状態ではX線写真に映りません。病気が進み、枝の先の全体がやられてからでないと映らないのです。しかし、空気の通り道ですので、せきや痰は出ます。そこで喀痰を検査すると発見できます。

 枝にできるがんは、喫煙者に多いため、喫煙者ではX線と喀痰細胞診の二つの検査が必要になります。

 X線は肺がん検診だけでなく胸部の異常をチェックする基本的な検査ですが、限界があり、写真ではわからない影が多く存在します。そこで、肺がん検診にCT(コンピューター断層撮影)を導入する考えが出てきました。

 ご質問の方はドックで肺がんの検診をされたようですので、恐らくCT検診を受けられたのだと思います。

 CTで肺がん検診をすると、肺がんを多く発見できます。しかし一方で、有所見率(なんらかの異常が認められる確率)が高くなりすぎる問題があります。

 頸(けい)部や甲状腺の異常、縦隔(左右の肺に囲まれた部分)病変、肺野の炎症性病変、血管の動脈硬化性病変など、これらをすべて有所見とするとなんと90%以上の有所見率となってしまいます。例えば、何らかの結節(腫瘍(しゅ・よう)のように見えるもの)がみられる受診者は全受診者の30〜70%にも達します。しかし、実際にがんであるのは、そのうちのわずかにすぎません。

 また残念なことに、一般の方にCT検診をすることで肺がんで亡くなる方を減らせるかどうかも分かっていません。ただし、肺がんになる危険性が高い方(重喫煙者)に対しては有用性があるとされています。

 肺がん検診は有用ですが、検診を受けていれば、がんで死ななくなるわけではありません。「私はたばこをたくさん吸うけれど、毎年肺がん検診を受けているから大丈夫」なんていうことは絶対にありません。

 グラフに米国の主要ながんの発生数と死亡数を示しました。肺がんが他のがんと違うのは、発生数と死亡数が近いことです。乳がんや大腸がんほどに検診が大変有用だとは言えません。しかし、他のがんと異なり、主要な原因の第一は喫煙だと分かっています。

 肺がんで死なないためには肺がんにならない生活習慣、すなわち禁煙が最も重要です。
(弘前大学保健管理センター教授 高梨信吾)

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