ここから本文エリア 17歳、拳にかけた再起 不登校…高校総体へ 兵庫2011年6月12日
中学時代は、ひきこもりだった。母親に泣かれて定時制高校に入った。個人競技ならとボクシングを始めた。そんな17歳がこの夏、ライト級の兵庫県代表として全国高校総合体育大会(インターハイ)に出場する。 先月29日、西宮市の県立西宮香風高校ボクシング場で、県高校総合体育大会のボクシング競技大会が開かれた。 神戸工業高校電気科3年の吉野鉄生(てつせい)君(17)は、ライト級(56キロ超60キロ以下)の試合に出場した。身長167センチ、体重59.5キロ。この階級の参加者は2人で、3ラウンドで勝てばインターハイに出場できる。 1ラウンドは緊張のせいか手数が少なかった。2ラウンドから徐々にパンチがきまり始め、結果は判定勝ち。相手は以前の対戦でも勝利しており、「自信はありました」。 神戸市須磨区に住む吉野君は3人兄弟の末っ子だ。小学6年の時に両親が離婚し、母親に育てられた。中学時代は柔道部に入り、1年の時に地域の大会で優勝したこともある。 ただ、1年の終わりごろから部活がだるくなり、練習に行かなくなった。顧問の先生に会うのが気まずくなり、学校も休むようになった。人と話すことも嫌になっていった。 母親には学校に行くふりをして、家から歩いて30分ほどの公園で漫画や小説を読みながら時間をつぶした。不登校に気付いた母親に「学校に行って」と何度も泣かれたが、大半の時間を自分の部屋で過ごした。卒業を1カ月前に控え、「高校は出てほしい」と母親に言われ、神戸工業高校への進学を決めた。 3年当時の担任だった徳野雅信教諭(48)は「初めて吉野君に会えたのは3年生の12月ごろ。握手をすると生きる力を強く感じた」と振り返る。入試対策のため、生徒が帰った後の教室で吉野君と2人で勉強会を開いた。「僕自身も母子家庭で育ったから、『絶対に親を悲しませてはいけない』と伝えました」 入学してボクシング部の練習に顔を出したのは、「高校では何か一つやり遂げたい」と思うようになったからだ。個人競技ならあまり人と話す必要はない。格闘技は小さい頃から好きだった。迷惑をかけた母親や、放課後に付きっきりで勉強を教えてくれた徳野先生のためにも、絶対に続けようと決めた。 平日は午前9時から午後4時までファストフード店でアルバイト。午後5時10分から授業を受け、放課後の練習に休まず参加してきた。母親の順子さん(42)は「ボクシングのおかげで学校もアルバイトも休まず行くようになった。立ち直ってくれて本当にうれしい」と喜ぶ。 入部当初から指導してきたボクシング部顧問の坂本泰志教諭(45)は「入学当時は全然、口をきかない子だった。でも毎日、練習に来て、教えたことを黙々とこなしていた」と話す。 1年の秋に神戸市アマチュアボクシング新人大会で最優秀選手に選ばれた。2年の秋には近畿高等学校ボクシング新人大会で3位に入賞。3年で挑んだ最後の県総体で、8月に秋田で開かれるインターハイへの切符をつかんだ。 「リング上で判定を待つとき、坂本先生の表情が笑って見えた。その瞬間、勝ったと思いました」 試合後、普段は無口な吉野君が笑顔で語った。過去の自分に打ち勝ったボクサーが、全国で1勝を狙う。(小川崇)
マイタウン兵庫
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