ここから本文エリア 筑波山の森林、「窒素飽和」状態 水質浄化機能が低下2010年9月3日
筑波山の森林が窒素過剰に陥る「窒素飽和」が進み、水質浄化機能が低下していることがつくば市の国立環境研究所の調査で分かった。同山の渓流水の硝酸性窒素の濃度が全国の森林の平均に比べ5倍近く高いうえ、約25年間で平均1.5倍も上昇していた。雨水に含まれる窒素化合物の量は増えていないため、人工林などの荒廃が原因ではないかと同研究所はみている。関連した二つの研究成果が17日から青森県弘前市で開かれる日本陸水学会で発表される。 森林は通常、窒素化合物を栄養分として吸収するが、量が多すぎると、蓄えきれず川に流れ出す。同研究所土壌環境研究室の林誠二室長と渡邊未来研究員らが、2007年から2年間、筑波山の源流域の40カ所で渓流水の硝酸性窒素の濃度を調べたところ、全国平均値の1リットル当たり0.4ミリグラムに対し、1.8ミリグラムだった。「窒素飽和」は都市近郊の森林で起こっているが、筑波山は濃度の高さが目立つという。 山麓(さんろく)の4地点(石岡市小幡)でも08年4月から今年3月まで月に2回、渓流水を採取し硝酸性窒素の濃度を調べた結果、1リットル当たり2.2から1.6ミリグラムが測定された。同様の調査は、別の研究員が1984年から86年にかけて同じ場所で実施したが、平均で当時に比べ1.5倍になり、2倍以上に上昇した場所もあった。 森林に降る雨水は、自動車の排ガスや農業などによる窒素化合物が含まれているが、雨水の濃度はこの25年間、あまり変わっていないという。 また、渡邊研究員の調査では森林に入る量より渓流水に流出する量が上回っていた場所があることも分かった。渡邊さんは「森林は雨水などから流入する窒素を吸収できないだけでなく、土壌へ慢性的に過剰に蓄積していた窒素化合物が流出している可能性が高い」と指摘する。 林室長らは、40地点の源流域では平均濃度が大きくばらついていることに注目。森林内の環境が濃度のバラツキを起こす要因の一つと考え、荒廃程度を示す人工林のこみ具合とわき水、土壌水の窒素含有量を測定した。 この結果、間伐が行われない人工林が著しく過密化することで、窒素を吸収する植物の成長を阻害。表層の土壌に含まれる窒素が増加して地中へ溶け込み、渓流水の濃度上昇を招いている可能性があることが分かった。 同研究所では、窒素飽和は森林力の減退や流域湖水の富栄養化、農業への影響などが考えられる、という。今年度から3年をかけて、筑波山の窒素飽和による森林への影響や流域への影響、改善の方法などについて研究を進めていく予定だ。(土田芳孝)
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