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「二度とこんな捜査しないで」 映像別人で無罪の男性

2010年9月2日

写真

無罪判決後に会見する男性=金沢市、代表撮影

 身に覚えのない盗みの疑いで逮捕されてから約10カ月。防犯カメラに映った犯人とは「別人」との鑑定結果が出た金沢市の男性(62)に、金沢地裁は1日、無罪判決を言い渡した。「二度とこんな捜査はしてほしくない」。男性は判決後に金沢市内で開いた記者会見で、強く求めた。

 「長い間、心身ともに不安定で苦しい立場に置かれ、大変だったと思います。すみやかに刑事補償手続きをとるようにして下さい」。判決理由の読み上げ後、入子光臣(いりこ・みつおみ)裁判官からこう語りかけられた男性は小さくうなずいた。

 昨年10月27日朝。自宅でテレビを見ていた時、玄関のチャイムが鳴った。扉を開けると、県警の捜査員数人が立っていた。白いシャツなどを押収され、連れて行かれた松任署で逮捕された。

 防犯カメラの「犯人」の写真を手にした捜査員に「お前だろう」と何度も詰め寄られ、「私です」と言ってしまった。窃盗行為については否認を続けたが、同年11月に起訴され、拘置所で年を越した。釈放されたのは今年4月になってからだった。

 無罪になることはわかっていた。それでも「被告人は無罪」との裁判官の声が耳に入ると、「非常にほっとした」。男性はこの日のうちに、勾留(こうりゅう)で生じた損害に対する補償金を求める「刑事補償」の請求を金沢地裁に行った。(井潟克弘、矢代正晶)

■裁判官、捜査に異例の注文

 本件のような捜査方法を改めることを切に要望する――。判決で入子裁判官は、捜査機関へ異例の「注文」をつけた。さらに、捜査段階で鑑定を実施していれば男性が起訴されることはなく、「約5カ月にわたる身柄の拘束を受けることもなかった」と指摘。捜査を「ずさんだったと言わざるを得ない」とした。

 金沢弁護士会副会長の中西祐一弁護士は、防犯カメラの映像での被疑者特定について、「捜査員の直感によるものが多い。映像のどこを比較して何が一致すれば同一人物なのか、判断の手法を確立すべきだ」と訴える。被告弁護人の織田明彦弁護士は「少ない証拠から自白を強要するのでなく、別の客観的証拠を探す捜査を」と語った。

 金沢地検の古賀栄美・次席検事は「基本に忠実な捜査を徹底しなければいけない」。県警の中永勇・刑事部長は、精度の高い映像鑑定ができる機器の導入を警察庁に要望していることを明かした。(山岸玲、黒田壮吉)

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