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企画特集

奄美の希少植物 盗掘横行で危機

2009年05月11日

写真

盗掘後のアマミエビネ。2株しか残っておらず、近くに掘り返されたような跡があった=3月15日

 世界自然遺産への登録を目指している奄美大島で最近、分布域が限られている珍しい植物が姿を消す現象が増えている。「盗掘だ」と地元の自然に詳しい人たちは口をそろえる。「奄美は盗掘天国」という声さえ聞かれる。島内を縦横に走る林道があだとなり、盗掘者が簡単に希少種の分布域に近づけるのが一因とみられる。県は盗掘を防ぐための条例をつくったものの現行犯でなければ摘発が難しく、有効な手だてを講じられないでいる。(斎藤徹)

 奄美大島の森から次々と姿を消す希少植物の多くは、愛好家の多いラン科の植物だ。
 「森に入るたびに嫌な気分になります」
 写真家で環境省自然公園指導員の常田守さん(55)がため息をもらした。
 環境省が絶滅危惧(き・ぐ)1A類に指定し、島でも限られた場所にしか確認されていないサガリランは、昨年7月に数株を残し消えていた。絶滅危惧1B類のチケイランは昨年8月に消えた。木の高い所に生えていたが、苔(こけ)ごとむしり取られたような跡があった。
 今年3月には、絶滅危惧1A類で同島固有種アマミエビネが、40株ほどの群落地にわずか2株しか残っていなかった。近くには掘り返されたような跡があった。
 元々数が少ないこれらの植物は台風や大雨などの自然現象で数を減らすこともあるが、奄美の森を30年近く観察している常田さんによると、場所が限定的で人為的な痕跡があることから、「盗掘と考えて間違いない」。
 それを裏付けるように、インターネットオークションには多くの希少植物が相次いで出品されている。
 昨年7月、大手のオークションサイトにサガリランが出品された。入札価格は5万円からの設定。「当方で殖(ふ)やしていた実生蘭の中から偶然出た素心(!)のサガリラン」という説明が付いていた。
 ランなど奄美の植物に詳しい日本植物分類学会会員の山下弘さん(57)は「希少なランを増殖栽培することはまず無理だ」として、違法採取したものとにらむ。

 島の現状について「盗掘天国」と言い切るのは、南方植物に詳しい島内の造園業者(62)。森の中で何度も盗掘の現場に遭遇したことがあるという。
 「奄美は愛好家がのどから手が出るほどほしがる希少植物の宝庫。しかも島外の人間も比較的簡単に探し出すことができる」
 その背景事情を次のように解説する。
 島内には、伐採した木を運び出すために昭和20年代末から整備された林道が縦横に走っており、島外の業者と島内の盗掘者が連携し、どこにどんな植物があるか情報を共有しているという。
 奄美群島を管轄する県大島支庁に自然保護の専門職員が常駐していないことなど、監視の目が行き届かないことも盗掘に拍車をかけている。
 「現場を見られなければ大丈夫と行政をなめている」と、この業者は盗掘者の心理を読み解いた。

 奄美市内の花屋に昨年7月30日、県環境保護課の立ち入り調査が入った。店先に白い花を咲かせたフウランが並べてあった。環境省が絶滅の危険が増大しているとして絶滅危惧2類に指定し、県が03年に制定した希少野生動植物保護条例で採取を禁止している植物だ。
 店側は「自分で育てたものや知り合いから買ったものだ」と主張。盗掘品であることを否定された県側は、客の誤解を招かないよう明示することを指導するしかなかった。
 93年に国が施行した種の保存法と県条例で採取が禁じられている奄美群島の希少植物は計18種。条例には懲役や罰金などの罰則を設けているが、同課の担当者は「盗掘の現場を押さえない限り、違法性を立証するのは難しい」と説明する。
 常田さんは「条例に指定されていないくても絶滅の危険にさらされている植物はもっとある。それらを加えないのはおかしい」と条例の不備について、別の側面からも問題提起する。
 「奄美の自然を考える会」など奄美の自然保護3団体は昨年12月、盗掘とみられる被害が横行しているとして、大島支庁に盗掘防止の強化策を訴えた。しかし、積極的な改善策はとられず、この間にも盗掘とみられる被害が起きている。
 「考える会」の元会長で半世紀以上にわたって奄美の植物を研究している田畑満大さん(73)は、こう指摘する。
 「行政はもっと毅然(き・ぜん)とした態度で取り組むべきだ。盗掘が横行している現状では、世界自然遺産への道は険しい」

■■採取が禁じられている奄美の植物■■
 アマミデンダ、ヤドリコケモモ、コゴメキノエラン(種の保存法)
ミヤビカンアオイ、ハツシマカンアオイ、リュウキュウアセビ、アマミセイシカ、テンノウメ、ウケユリ、クスクスラン、シコウラン、アマミエビネ、レンギョウエビネ、オナガエビネ、カンラン、フウラン、カクチョウラン、ナゴラン(県希少野生動植物保護条例)

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