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佐藤克之さん(55)2009年05月18日 ――全国で児童虐待の事件が絶えない。背景にどんな問題があるとお考えですか よく指摘されるのは、地域の子育て能力の低下です。以前は近所で子どもを育てる文化があったが、今ではほとんどなくなった。格差が広がったことの影響もある。経済的な困窮が原因で、家族関係が不安定になることもあり得るようです。 アフリカで調査研究をしていた時、路上で子どもたちがごみをあさる姿を見て「大変だな」と思った。日本でも、身体的な虐待を受けた子や育児放棄された子の事例を小児科医師として経験した。日本は日本で大変だなという気持ちが強い。 ――行政は何をすべきだと考えますか 県の福祉事務所に勤め、生活保護や母子家庭への貸し付けなどの業務をしていたとき、「経済的に最低限の生活を行政が支えてあげないと、虐待が起きてしまうかもしれない」と心配したこともあった。お金がすべてではないが、まず経済的に援助する制度を広く知らせ、活用してもらうことが大事です。 民生委員や児童委員は各地におり、虐待を発見したら児童相談所(児相)に連絡をもらえるよう連携が重要。親や子と接する学校などに、日常的に見守ってもらう必要もあります。 ――児相が家庭に介入することもありますが、どのタイミングで、どこまで介入するか、難しさもあるようですね 子どもの安全や権利をどう保障すべきかが問題の根幹。児相の権限は強化されつつあり、必要だと思ったら介入もしないといけない。遅いとか、やりすぎだとかいう批判を受ける覚悟も必要です。 ――親が育てられない赤ちゃんを匿名で預ける赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の問題にはどう向き合いますか 子どもの安全と権利をどう守るかが課題です。子どもには、自分がいつどんな親から生まれたかの出自を知る権利がある。児相は「ゆりかご」に預けられた子についても、親などを調べる社会調査をする。親がわかってもわからなくても、将来、成長した子どもに対し「あなたの権利を守るため、できる限りの調査をした」と説明できるようにしておきたい。 ――親が子どもを「ゆりかご」に預けないですむよう、児相としてできる対応は 相談態勢を充実させることに加え、気軽に相談してもらえるように敷居を低くすることが課題です。相談すれば、母子ともに生活が保障される方法があるなどということを、分かりやすく説明したいと思います。 さとう・かつゆき 54年、鏡町(現八代市)生まれ。80年に熊本大医学部を卒業後、90年まで長崎大熱帯医学研究所に所属し、国際協力事業で計4年間、アフリカ・ケニアで、寄生虫病の調査・研究に取り組む。91年から小児科医。94年に県こども総合療育センター(宇城市)に勤務して以降、県職員に。今年4月から現職。 熊本市の慈恵病院の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が、10日で運用開始から2年を迎えた。設置当初は賛否両論を巻き起こしたが「赤ちゃんポストに子どもが預けられない社会にするためにどうすべきか」という問いへの明確な答えはいまだ出ていないように思える。 赤ちゃんポストに子どもを預け入れることにせよ、児童虐待にせよ、心からしたくてしている人がいるとは思えない。望まない一線を越えてしまうまで親が追い詰められる前に、どのように話を聞き、支援できるか。佐藤さんら行政の担当者の果たすべき役割は大きく、その活動に期待していきたい。(岡田将平)
マイタウン熊本
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