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父親殺害長男に不定期刑

2009年11月14日

  ◆弁護側「納得できぬ」

   ◎判断能力斟酌されず

 責任を厳しく自覚させるには懲役刑がふさわしい――。大和郡山市で昨年6月、会社員の父親(当時51)を殺害したとして殺人罪に問われた長男(19)に対する13日の奈良地裁判決。懲役5年以上10年以下の不定期刑について、弁護人は「犯行に至った本人の判断能力などを裁判所に十分斟酌(しん・しゃく)していただけなかった」と残念がった。

 公判は午後1時10分に開廷。黒のスエットにジーンズ姿の長男が出廷する際、手錠と腰縄をしている姿が傍聴席から見えないようついたてが置かれた。長男は、石川恭司裁判長が読み上げる判決文を淡々と聴き入り、最後に小さくうなずいた。

 弁護側は長男の自首の成立を主張したが、判決は、警察がすでに犯行を認知していたなどとして認めなかった。犯行経緯や長男の態度に広汎性発達障害の影響があると認定したものの、「事前に凶器を購入するなど計画的な犯行」などと指摘した。

 長男の代理人、増田周三弁護士は「刑務所では発達障害を持つ人の更生プログラムは存在せず、納得しがたい判決。厳罰を望まず、更生可能な教育的処分を願っていた家族の思いも理解していただけなかった」と話した。控訴するかは長男らと相談して決めるという。

 福島章・上智大学名誉教授(犯罪心理学)は判決について、「医療少年院は原則20歳まで、大抵は遅くとも23歳で社会に出ることになる。19歳という年齢も考慮に入れ、懲役刑を選んだのだろう」と一定の理解を示した。

 一方、判決が「十分な反省を欠く状態が続いている。責任を厳しく自覚させるには懲役刑がふさわしい」とした点については、「反省・悔悟の情が表現されにくいのがまさに広汎性発達障害の特徴。刑務作業で反省が深まるとは思えない。少年刑務所よりも、精神科医や臨床心理士が充実している医療刑務所が望ましい」と話した。

  ■判決要旨■

 【認定事実】

 08年6月27日午前2時50分ごろ、大和郡山市内の自宅1階居間で、実父(当時51)に対し、殺意を持って斧(おの)で頭と首を殴打するとともにサバイバルナイフで首を突き刺すなどして、右総頸動静脈(みぎ・そう・けい・どう・じょう・みゃく)切断による失血死で殺害した。

 【自首の成否】

 犯行後に(長男が)警察署に行った際には、すでに犯行が認知されており、犯人であるとの嫌疑も生じていたことが推認される。自首は認められない。

 【量刑の理由】

 弁護人は、長男の更生のためには保護処分に付するのが相当であるから、家庭裁判所に移送すべきであると主張するが、本件の態様や被害結果などからすれば、長男の抱える資質上の問題性などを十分考慮しても、保護処分に付するのは相当とは言えず、刑事処分を科すことはやむを得ない。

 犯行動機は、資質上の問題による影響があるとはいえ、身勝手極まりなく、それ自体に酌量すべき余地は全くない。計画性が高く、態様は執よう、残虐といわざるを得ない。被害者の実父は、就寝中の無抵抗な状態で激しい暴行を受け、その一命を奪われていて、被害結果は重大である。犯行経緯や犯行後の態度には資質上の問題性が影響していること、遺族は厳罰までは望んでいないこと、長男は犯行後警察署に出向いたこと、前科前歴がないことなどの酌むべき事情を十分考慮しても、主文の刑(懲役5〜10年)を科すべきである。

  ■大和郡山・父親殺害事件の経過■

2008年
6月27日 大和郡山市の印刷会社員の男性宅で、1階居間で死んでいる男性を次男が見つけて110番通報。原付きバイクで出頭した長男を郡山署が殺人容疑で緊急逮捕

  28日 県警が長男を殺人容疑で地検に送検

7月10日 精神鑑定実施のため、地検が長男の鑑定留置を簡裁に請求し、認められる

  11日 長男の勾留(こうりゅう)を停止し、施設に移送

10月10日 長男の鑑定留置終わる

  15日 地検が長男を殺人の非行事実で家裁に送致

  24日 家裁で最初の少年審判。処遇を決める審判始まる

  31日 2回目の少年審判。付添人弁護士が鑑定を申し出

11月11日 3回目の少年審判で、家裁が検察官送致(逆送)と決定

  20日 地検が長男を殺人罪で起訴。地検は「なぜ殺してしまったのか自分なりに後悔し、反省していた」と長男の言葉を明らかに

2009年
4月16日 奈良地裁で長男の初公判。「間違いありません」と起訴事実を認める

  21日 第2回公判。長男は「父を殺さないと自分が生きていけないと思った」と述べる

9月24日 第3回公判。長男の弁護側が要請した精神鑑定の結果について、精神科医が「生まれながらの特定不能の広汎性発達障害で、犯行時は妄想性障害だった」と明らかに

10月15日 論告求刑公判。検察側は、長男に5年以上10年以下の不定期刑を求刑。弁護側は、医療少年院での治療が必要として家裁への移送を求める

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