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ここから本文エリア 医のおはなし
ドラッグ・ラグ2009年05月19日 ◇薬承認 日本独自の評価必要 最近になり、厚生労働省によって転移再発卵巣がんに対する二次治療薬として“ドキシル”という抗がん剤が認可されました。米国で90年代に有効性が認められ、欧米では早々と承認されていますが、先進国ではわが国が最後の承認になってしまいました。 このように、海外で承認された有効な薬剤がわが国では承認されていない状況を「ドラッグ・ラグ」と呼んでいます。原因として厚労省などの審査の遅れが強調されていましたが、実は色々な要因が複雑に組み合わさっています。 最も重要な点は、わが国が独自に薬剤の承認のための評価を行うかどうかです。世界では、米国の審査機関である医薬品食品局の承認があれば無条件で新しい薬を認めている国が少なくありません。 しかし、抗がん剤をはじめいくつかの薬では、適切な投与量そのものが日本人と欧米人では異なることが分かっています。最近の「分子標的薬」という新しい抗がん剤には副作用の出現が日本人と欧米人で著しく異なる薬があることも明らかになりました。その意味で最小限の評価を日本人に対して行うことが必要となります。さらに、薬を処方する専門医の数など医療環境の差も考慮が必要です。 そして海外で高い有効性が認められた薬が日本で速やかに承認されない理由ですが、(1)外資系を中心とした製薬企業が日本で承認を得るための臨床試験である治験を始めるタイミングを大幅に遅らせていること(2)日本での治験の遂行に時間と高額の費用がかかること(3)審査当局の審査機能が不十分で審査に時間がかかること、があげられます。 最近では、抗がん剤の承認を得るには新薬の対象となる患者さんの寿命を確実に延ばすことを証明することが必要になってきました。このような治験には膨大な数の患者さんの協力が不可欠です。世界やアジアの国々が協力して治験を行う「国際共同治験」の考え方が強くなり、日本の医療機関も多くの「国際共同治験」に参加しています。 また、治験を担当できる病院は、院内の体制を完備する必要があり、一般の診療でも高い水準が求められることは言うまでもありません。その意味では、埼玉県でも質の高い治験を遂行できる病院がまだまだ足りていません。 (埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科 佐々木康綱教授)
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