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難病認定へ署名31万余2009年03月12日
◆腹に水たまる「腹膜偽粘液腫」 腹膜内に粘液性の水が大量にたまる病気「腹膜偽粘液腫(ぎねんえきしゅ)」を、国が難病と認定するよう求める署名活動が続いている。発症率は100万人に1人といわれ、原因は不明で治療法は確立していない。専門的に治療にあたる医師は国内に1人しかいない。3年前、遺族や患者らが支援の会を立ち上げ、現在、30万人を超える署名が集まった。(上林格) ◆原因不明、専門の医師1人 「腹膜偽粘液腫患者支援の会」代表の藤井満子さん(55)=大田区=の次男亮さんが体の変調に気づいたのは04年の春ごろだった。腹部が妊婦のようにぽっこりふくらんできた。病院では「胃潰瘍(かい・よう)」と診断された。 食欲がなくなった。押されるような痛みもある。教員をめざす学生だったが、教育実習先の学校で給食に出たやきそばも6本しか口にできなかった。 ◆ゼラチン状の水 月12リットル抜く 「治療法はない」と宣告された。対症療法として腹にたまったゼラチン状の水を1カ月間に計12リットル抜いた。退院後、抗がん剤の投与を始めたが、半年後には再び腹がパンパンに張った。胃に穴を開け、ゼラチン状の塊を取り除いた。 腹膜内に増殖するゼラチン状の水は臓器にこびりつき、圧迫された臓器は次第に機能しなくなる。亮さんは05年春、念願の中学校の教壇に立ったものの1カ月で退職。翌月、22歳で帰らぬ人になった。 亮さんは、家族には内緒でホームページを立ち上げていた。就職祝いに買った時計の写真や卒業旅行の思い出などとあわせ、治療記録も軽いタッチの文章で載せていた。 「原因不明の病気のことを、どうしてもだれかに訴えたかったのでしょうね」と満子さん。手探りのまま、息子の遺志を継ぐ形で仲間と患者支援の会を立ち上げた。 間もなく、日本でただ1人専門的に取り扱う米村豊医師(60)の存在を知った。米村医師は98年、この病気の治療法を確立するために結成された国際腹膜播種(は・しゅ)治療学会のメンバーだ。 同治療学会では、腹膜内の転移を完全切除する手術と、肉眼ではとりきれない微小な転移を治療するための「術中温熱療法」を開発している。欧米や豪州では標準的な治療法とされ、腹膜手術で転移が完全に切除できた場合は約40%の患者は完治するという。 米村医師によると、この3年間に国内で約350の症例があり、同医師は現在までに250例の手術を経験した。 腹膜切除による腫瘍の完全切除率は約45%という。昨年は妊婦の患者が患部を残したまま出産する手術に成功した。 ◆初めは「卵巣に原因」と診断 02年春に発症した多摩地域に住む50歳代の女性は当初、医者に「卵巣に原因がある」と診断された。 しかし、手術して腹を開いてみたら違っていた。医師からは「ゼリー状のものを半分ぐらいとって、ふたをした」との説明を受けた。別の病院で検査した結果、腹膜偽粘液腫という病名は判明したが、卵巣切除など計3回の手術を受けることになった。 07年秋、テレビで米村医師の存在を知った。昨年、滋賀県の病院で手術を受けたが、患部すべては取り切れていない、という。 女性は藤井さんたちと署名活動を続けている。国内に頼れる医者が1人しかいないのが不安だからだ。女性の夫は、「妻の病気を知ったとき、家族は荒野に孤立して立たされたようでした。国の難病に認定されれば、少しでも治療法の研究が進む。望みなくして生きていくよりは、少しでも生きる支えがほしいんです」と訴える。 2月下旬、藤井さんたちは厚生労働省に5回目の署名を届けた。署名は計31万5千人分に達していた。28日には患者支援の会が初めての総会を開く予定だ。 米村医師への連絡は、NPO法人腹膜播種治療支援機構の勝谷さん(t−katsutani@room.ocn.ne.jp)へ。 ◇ 難病(特定疾患)の認定 国の難病に認定されるには(1)病例数が少ない(2)原因が不明(3)効果的な治療法が確立していない(4)生活面で長期にわたり支障をきたす――が要件になる。 不定期に開催される厚労省健康局長の諮問機関「特定疾患対策懇談会」(22人)での取りまとめを受けて認定される。現在、123疾患が「特定疾患」と認定され、治療方法の確立に向けた研究の対象になっている。そのうち45疾患は医療費が公費負担助成の対象。4月から新たに7疾患が認定される。
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