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ここから本文エリア とうきょう昆虫記
カブトの免疫力 夢の薬に?2009年09月11日
◆抗菌物質 実用化に期待 抗生物質さえ効かない薬剤耐性菌やがん細胞だけをねらい撃ちし、副作用が少ない――。カブトムシが持つ免疫パワーが、そんな特効薬の開発に役立つかもしれない。 人間などは一度細菌などの感染源に接触すると、抵抗力がつく「獲得性免疫」を持っている。しかし、自然免疫しか持たない昆虫が、感染からどう身を守っているのか。このテーマに取り組むのが、農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の生体防御研究ユニット長、石橋純さん(43)のチーム。現在、実用化を視野に研究を進めているのが、カブトムシの幼虫がつくる「抗菌ペプチド」だ。 抗菌ペプチドは複数のアミノ酸がつながったたんぱく質の小型版。細菌が侵入すると現れて菌を壊し、役割を終えると消える「最初の防衛線」といえる仕組みの一つだ。昆虫だけでなく人間や、あらゆる動植物がそれぞれの生活環境に応じて、多様な構造・働きの抗菌ペプチドを発達させてきた。 「細菌の多い土の中で育つカブトムシなら、強い抗菌物質が見つかるかも」。同研究所が96年、分離に成功したのが「カブトムシディフェンシン」。抗生物質が効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に強い殺菌作用があることが分かり、応用研究に弾みがついた。 そのまま人間に投与しても異物として認識され、アレルギーの原因となってしまう恐れがある。そのため、石橋さんらは抗菌作用を維持できる配列部分を特定し、アミノ酸の種類や位置を入れ替えて実験を重ねた。そして、大腸菌など他の菌にも有効な「最小・最強」の改変ペプチドにたどりついたのが10年前だ。 最近になって、同ユニット研究員の岩崎崇さん(26)が、骨髄腫など一部のがん細胞に対しても増殖抑制効果があることを見つけた。 哺乳(ほにゅう)類の体細胞では膜表面が電気的に中性なのに対し、抗菌ペプチドはプラスの電荷を帯びている。一方、侵入者である細菌の細胞膜はマイナス帯電のため、静電気のように引き寄せられた抗菌ペプチドが細胞に穴を開け、破裂させてしまうらしい。 一部のがん細胞も表面がマイナス帯電のため、同様に作用すると考えられるという。ただ、実用化までには安全性や効果、コストなど、まだ研究が必要だ。 いま、岩崎さんが注目しているのは、細胞の中でエネルギーを作り出すミトコンドリアと呼ばれる小器官。改変ペプチドがミトコンドリアを壊すことを確かめ、論文を発表したばかりだ。「薬剤を特定の細胞に送り込む技術と組み合わせれば、他のがんや細菌などに応用範囲が広がるかもしれない」と意気込む。 (水野雅恵)
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