ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン鳥取> 記事

くらし・経済

【医を創る〜中国地方から〜】

がん対策推進計画 独自策に患者の視点

2009年05月21日

写真

写真

広島県が作った治療の記録などを残す乳がん患者向けの手帳

写真

気になる症状などを手帳に記入する澤山文枝さん

 がん患者の視点に立った総合的ながん対策を進めようと、都道府県は「がん対策推進計画」を作り、充実した医療体制や患者支援策の整備に取り組んでいる。中国5県もがん対策予算を組み、独自の施策に力を入れている。「乳がん対策日本一」を目指すと宣言する広島県は、10年間の治療歴や症状を保存、共有できる乳がん患者向けの「わたしの手帳」を作った。

◇10年の記録 手帳に 【広島県】

「しこりの大きさ 1・1cm」「センチネルリンパ節 転移なし」

 5月上旬、かかりつけ医から「わたしの手帳」をもらった会社員澤山文枝さん(58)=広島市安佐南区=は自宅に戻り、「あなたの乳がん情報」のページに手術後の病理検査の結果を書き込んだ。放射線治療をした期間やその内容も加えた。

 自己チェック項目には、術後10年まで1カ月ごとに、手術をした乳房としていない側それぞれにひきつれやしこりはないか、気になる症状などを書く。その下には、医師が問診結果や採血、腫瘍(しゅ・よう)マーカーなどの結果を書き込む。診療の流れの説明や日常生活の注意点などもコンパクトにまとめられている。

 澤山さんは「自分の情報は自分できちんと管理していったほうが良い。つづっていけば、カルテ代わりになり住んでいる所や医師が変わっても安心」と手帳の長所をあげる。医師とのコミュニケーションにも役立つ。気付いたことを書いておけば診察の時に忘れず医師に言える。医師に言われたことをメモするのにも便利だ。

 乳がんは、手術後も放射線や化学療法など継続的な治療が必要で、いくつもの医療機関を受診することになる。医師同士が治療歴や診療計画を共有できるよう、県は医療機関向けの「診療計画」を作っている。さらに患者向けの診療計画も作ろうと昨年度、県医師会や広島大学などと連携。大阪の病院が使う手帳などを参考に手がけた。

 患者らからも意見を聞き、表紙に「がん」という文字を入れず、ベージュとピンクの優しい色合いに仕上げた。3千部作り、予算は約80万円。県内のがん診療連携拠点病院など18施設や県医師会に配布。医師から乳がん患者へ、使い方を説明しながら渡すことを求めている。

 原案を作った医師の一人、香川直樹さんは「患者さんとかかりつけ医、拠点病院の医師の3者で情報を共有するツールになる。内容をみればどうして自分がこの治療を受けているのか患者さんの理解が深まるし、乳がんを専門としない医師への啓発にもつながる」と話す。

 担当する県医療政策課は「使い始めた患者さんの意見を聞きさらに改良したい。増刷も検討している」と言う。

◇◆◇キーワード◇◆◇

広島の乳がん対策

 「広島乳がん医療ネットワーク」を作り、検査や治療の各段階で一定の基準を満たす医療機関名を公開、どの参加施設でも同じ水準の治療を受けられる態勢を推進する。検診の受診率アップなどで2017年度の乳がんによる死亡率を47都道府県で最も低くするなど「乳がん対策日本一」を目標に掲げている。

◇今年度 島根県手厚く

 医療機器の購入費や人件費などを除き、各県が「がん対策」とみなす07〜09年度の予算を比べてみた。

 09年度のがん対策予算額を県人口で割った1人当たりのがん予算が最も多いのは島根県。08年度から53%増えた。予算が増えた主な理由は今年度、緊急雇用対策として県内6カ所のがん拠点病院のがん相談支援センターに、相談員の補助員を3人ずつ計18人雇用するため。3400万円の予算を充てる。また80万円の予算を組み、患者と医師や看護師らが交流を深め、情報交換する場として「がん患者塾」(仮称)をつくる。

 各県は、医療機関が提供する医療の質に差がないよう、「均てん化」に取り組む。岡山県はがん診療連携拠点病院のがん医療水準均てん化促進事業に4500万円。山口県は、院内がん登録や、患者や家族への相談支援も含めたがん診療連携病院整備事業に6350万円。鳥取県は同様に3909万円を充てる。

 がん患者の体の痛みや精神的な不安を和らげ、その人らしい生き方を実現させる緩和ケア対策には、広島県5512万円、山口県1600万円、鳥取県82万円など。

 山口県は、たばこ対策に189万円を組み、市町や企業向けの研修会を開いたり中学生を対象にたばこの害を訴えるリーフレットを作成したりする。

 患者支援のための予算もそれぞれ工夫している。広島県は患者団体への電話相談事業
の委託や相談員研修会の経費などに340万円。山口県は今年度初めて、患者会との連携事業として110万円を確保。がん経験者による講演会の開催を目指す。鳥取県はがん患者団体支援事業として島根県など患者団体の活動が盛んな先進地の視察や患者団体が意見交換をする費用に53万円を充てる。

◇現場と行政結び低予算でも好例

「こういうのほしかったんですよ」。手帳について香川医師は言う。他の医療関係機関がつくった類似の手帳を自身の診療所の患者さんに渡し、必要性を実感していたからだ。改良を加え、3千人分の10年間の治療や症状の内容が患者の元で蓄積されることになった。予算は80万円。現場の思いと行政の努力が実った好例だと感じた。
(辻)

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

ここから広告です

広告終わり

広告終わり